不妊治療における男性の検査と原因を解説!体外受精前に知るべき障害

著者:森ノ宮アクア鍼灸治療院

不妊治療において、「男性側の問題」は決して例外ではありません。実際に、不妊の原因のうち約半数が男性にあると報告されています。にもかかわらず、「精子に問題があるのでは」「泌尿器科や生殖医療科のどこを受診すればよいのか」と不安を抱えながら、一歩を踏み出せずに悩む方は少なくありません。

 

精液の質や量、射精の機能、精巣や精路の異常など、男性不妊の原因は多岐にわたります。特に無精子症や乏精子症、勃起不全、逆行性射精などは、本人でも気づきにくく、検査を受けなければ発見が難しいこともあります。また、精索静脈瘤やホルモンの乱れ、生活習慣による酸化ストレスなど、精子機能の低下を招く要因も無視できません。

 

この記事では、最新の生殖医療に基づいた男性不妊の原因と検査方法、保険適用の範囲や費用の目安、診療科の選び方などを徹底的に解説しています。泌尿器科と婦人科、外来クリニックの違い、精液採取の流れや精子の濃度・運動率測定といった検査内容にも触れ、精密検査や顕微授精を含めた治療アプローチも紹介。

 

妊娠を望むパートナーとともに最初の一歩を踏み出すために、今こそ正しい知識を手に入れませんか?本記事を最後まで読めば、「どこで何をすべきか」がクリアになり、治療の迷いが消えるはずです。専門医による監修のもと、信頼できる医療情報を元にしたこの記事が、あなたの妊活の第一歩となりますように。

 

不妊治療専門の鍼灸サポート – 森ノ宮アクア鍼灸治療院

森ノ宮アクア鍼灸治療院は、鍼灸を通じた不妊治療を提供し、妊娠を望む方々を支援しています。独自のアプローチで体質改善とホルモンバランスの調整を目指し、特に自然妊娠をサポートする施術を行っています。患者一人ひとりの体調に応じた丁寧なカウンセリングと施術計画を通じ、リラックスした環境で治療を受けられるのが特徴です。

森ノ宮アクア鍼灸治療院
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男性不妊とは何か 不妊は女性だけの問題ではない

不妊の40〜50%は男性に原因がある現実

不妊の原因は女性側にあると思われがちですが、実際には約半数が男性に起因していることが、厚生労働省や日本生殖医学会のデータからも明らかになっています。男女それぞれに原因があるケースや、男性のみに原因がある場合も少なくありません。近年では男性側の検査や治療の重要性がようやく注目され始め、夫婦での同時受診を推奨する医療機関も増えています。

 

男性不妊とは、妊娠を希望する夫婦において、性交渉を継続的に行っているにも関わらず、1年以上妊娠に至らない状態のうち、主に男性側に起因するものを指します。原因には、精子の数が少ない、運動率が悪い、形態異常が多いといった精子の質的・量的な問題、または性機能障害や精路の閉塞など、多岐にわたる要素が関係しています。

 

以下に、実際に確認されている不妊原因の割合を示した表を掲載します。

 

不妊の主な原因割合(目安)内容の例
男性のみ約25%精索静脈瘤、無精子症、性機能障害など
女性のみ約25%排卵障害、卵管閉塞、子宮異常など
男女双方約25%どちらにも軽度な障害があるケース
原因不明約25%医学的に明確な異常が認められない

 

このように、男性に原因があるケースが全体の約半数にのぼることから、女性ばかりが治療に取り組むのではなく、男性側も検査を受けることが第一歩となります。特に近年では晩婚化が進み、男性側の年齢が高くなることで精子の質が低下し、妊娠の確率を下げてしまうという指摘もなされています。

 

また、男性不妊の検査に対する精神的ハードルも大きな課題のひとつです。恥ずかしさや抵抗感から受診を先延ばしにする男性は少なくありません。しかし、早期発見・早期対処が妊娠への近道であり、精子検査やホルモン検査などの基礎的な検査を行うだけで、原因の特定と適切な治療法の選定につながります。

 

検査を受ける際には、以下のような初期症状や状況を自覚したタイミングが一つの目安となります。

 

  • 性欲の低下や勃起力の減退を感じる
  • 射精量が減った、または射精に時間がかかるようになった
  • 精子の検査結果で運動率が低い・数が少ないと指摘されたことがある
  • 夫婦生活に問題はないが1年以上妊娠しない
  • 子どもができにくい体質ではと自覚している、または過去に指摘を受けた

 

男性不妊の治療は、検査結果をもとに投薬療法や生活習慣の改善、手術療法など複数の選択肢があります。近年では体外受精や顕微授精といった補助生殖医療(ART)の技術も進化しており、男性不妊であっても妊娠を実現する可能性は高まっています。

 

男性自身が問題に向き合い、正しい情報をもとに行動すること。それが、パートナーとの妊娠の確率を高める鍵となります。現代における妊活は、もはや女性だけの問題ではなく、夫婦が一体となって取り組むべき共同プロジェクトであると強く意識することが求められています。

 

精子の質・量が低下するメカニズムとは?

精子の質や量の低下は、単一の要因によって起こるものではなく、複数の環境的・生理的・生活習慣的要因が重なって引き起こされます。日本泌尿器科学会や各種の生殖医療ガイドラインでも、以下のような要因が精子の形成や運動能力に影響を与えることが明らかにされています。

 

まず代表的な要因が年齢です。女性の妊孕力が年齢と共に低下することは広く知られていますが、実は男性も30代後半から精子のDNA断片化率(DFI)の上昇、精子濃度や運動率の低下がみられることが分かっています。とくに40歳を超えると自然妊娠率の低下が顕著になり、顕微授精を行っても成功率が下がるというデータもあります。

 

加えて、以下のような生活習慣が精子の質の劣化に直結します。

 

精子に悪影響を与える生活習慣

 

要因詳細な影響内容
喫煙酸化ストレスを高め、DNA損傷や精子運動率低下を招く
飲酒テストステロン分泌を抑制し、造精機能に悪影響
睡眠不足睾丸の回復機能が低下し、ホルモンバランスが崩れる
肥満インスリン抵抗性と関連し、性ホルモン異常を誘発
長時間の座位陰嚢温度上昇による造精障害のリスク上昇
スマホ・PCの膝上使用電磁波や熱による精巣ストレスの懸念
サウナや温泉の頻度過多高温環境による精巣機能の一時的低下

 

これらの要素は、どれも現代男性が日常的に接している環境や行動に起因するものであり、意識的に改善していくことが重要です。

 

また、ホルモンバランスの乱れも見逃せません。精子の生成には、下垂体から分泌されるゴナドトロピン(FSH、LH)や、睾丸から分泌されるテストステロンといった性ホルモンのバランスが密接に関与しています。ストレスや加齢、病気によってこれらの分泌量や機能が低下すると、結果として造精機能が低下し、無精子症や乏精子症の原因となり得ます。

 

さらに注目されているのが「酸化ストレス」の影響です。これは体内の抗酸化力よりも活性酸素の発生が上回った状態を指し、精子のDNAを損傷し、受精能力を大幅に下げる要因となります。喫煙や大気汚染、ストレスの多い生活は酸化ストレスを高める原因です。

 

一方で、これらのリスク因子を改善することで精子の質は向上する可能性があります。亜鉛、ビタミンC、ビタミンE、L-カルニチンなどの栄養素を意識的に摂取し、適度な運動と良質な睡眠を保つ生活習慣を実践することで、改善が期待できます。

 

男性不妊のセルフチェック!不妊治療は行った方がいい?

自宅で簡単!妊娠力セルフチェックシート

妊娠を望むカップルにとって、男性側の妊娠力を把握することは非常に重要です。実は、男性不妊の割合は全体の約半分とされており、自分の体の状態を知ることは、カップルの未来を左右する要素になり得ます。そこで、誰でも簡単に実施できるセルフチェックシートを活用し、自宅で妊娠力を自己診断する方法をご紹介します。

 

まず、以下のテーブルは、妊娠に関わる代表的な身体的・性的な症状や生活習慣に関する質問です。チェック項目が多く当てはまる場合は、早期に医療機関の受診を検討すべきでしょう。

 

表:妊娠力セルフチェックシート(〇が多いほど医療機関受診推奨)

 

項目状態の確認内容該当あり(〇)
射精時の量が少ない精液量が1ml以下か明らかに減ったと感じる
勃起力が落ちた朝の勃起が減った、性行為での維持が難しい
性欲が減退したパートナーへの関心が薄れた、自己刺激も減少
疲れやすい疲労感が抜けにくく、常に体が重く感じる
睾丸の大きさに左右差極端な差や痛み、腫れがある
陰嚢がだるい・重い精索静脈瘤の可能性あり
禁煙できない喫煙が習慣化し、1日10本以上吸う
肥満傾向があるBMI25以上、メタボ気味
精巣の病歴があるムンプス(おたふく風邪)や怪我歴がある
スマホ・PCを膝上でよく使う長時間の高温環境による精子形成低下が懸念

 

このセルフチェックはあくまで初期の目安ですが、該当数が3つ以上の場合は専門の泌尿器科や不妊治療クリニックでの検査を検討してください。特に「射精量が少ない」「勃起力の低下」「睾丸の違和感」などの項目に当てはまる方は、精液検査やホルモン検査などの精密な診断が重要です。

 

また、射精や性欲の低下はホルモンバランス(特にテストステロン)の影響も強く、EDや性機能障害の兆候として現れることがあります。自己判断で放置せず、早期に医師へ相談することで、改善への第一歩となります。

 

さらに、近年は男性不妊の原因として酸化ストレスや生活習慣病(糖尿病・高血圧など)が注目されており、運動不足や喫煙・飲酒、過労といった日々の行動が妊娠力を左右しているとわかってきました。

 

以下は男性不妊に関係する主なセルフ改善ポイントです。

 

  1. 睡眠時間を7時間以上確保する
  2. 運動習慣(週3回・30分以上の有酸素運動)を持つ
  3. サウナや長時間入浴を控える(精巣温度上昇対策)
  4. 禁煙・節酒を心がける
  5. ストレス対策として趣味やリラクゼーションを取り入れる

 

生活習慣の見直しだけで精子濃度や運動率が改善するケースも多く報告されており、医療機関にかかる前に自分自身でできることから取り組むことが重要です。

 

見た目や体調でわかるサインとは?

男性不妊の兆候は、意外にも日常生活の中で見落とされやすい「見た目」や「体調」の変化から現れます。精子や精液の異常だけでなく、ホルモンバランスや血流の悪化など、体全体の変化が妊娠力に関わっているのです。

 

まず、以下に示す体調面の変化は、妊娠力が低下している可能性を示す代表的なサインです。

 

  1. 性欲が著しく低下している
  2. ED傾向(性行為の継続が困難、朝勃ちがない)
  3. 慢性的な疲労感・眠気・集中力の低下
  4. 顔色や肌のハリの減少
  5. 筋肉量の減少や体脂肪の増加

 

これらは加齢による男性更年期(LOH症候群)とも関連があり、テストステロンという男性ホルモンの分泌量が減ることで起きる体の変化です。とくに30代後半から徐々に症状が現れるケースが増加しており、見過ごされがちな不妊原因となっています。

 

また、見た目にも現れる症状として以下のような要素が確認されています。

 

見た目の変化関連の可能性
髭が薄くなってきたテストステロン分泌低下の兆候
胸に脂肪がつくホルモンバランスの崩れ
皮膚が乾燥しやすい体内の代謝低下・血流悪化
お腹周りが太るインスリン抵抗性・精子形成異常の可能性
手足が冷えやすい血行不良、末端冷え性傾向

 

これらの兆候が同時に複数見られる場合、男性不妊のリスクが高まっていることが考えられます。特に、「性欲の喪失」「ED傾向」「慢性疲労」がセットで見られる場合は、ホルモン分泌に大きな乱れが生じている可能性があります。

 

さらに、ED(勃起不全)は心理的要因と身体的要因の両面が関与するため、単なる疲れと自己判断せず、専門の泌尿器科や性機能外来での相談が有効です。最近ではプライバシーに配慮されたクリニックも増えており、予約制・男性専門の外来など、受診のハードルも下がっています。

 

よくある不安として「男性不妊の検査は痛いのか?」「保険適用されるのか?」といった点がありますが、精液検査は基本的に痛みはなく、保険適用での診療が可能なケースも多いです。射精による精液採取と、場合によってはホルモンや超音波検査が行われる程度です。

 

男性不妊になりやすい人の特徴と生活習慣

喫煙・ストレス・運動不足が与える影響

現代社会では喫煙や慢性的なストレス、運動不足といった生活習慣が男性不妊の大きなリスク要因として注目されています。こうした要素は単独でも精子の質や妊孕性に悪影響を与える可能性がある一方で、複合的に絡み合うことでより深刻な生殖機能障害を引き起こすことが分かってきました。特に酸化ストレスによるDNA断片化、ホルモン異常による造精機能の低下、ED(勃起障害)などへの影響は科学的にも根拠があり、男性不妊症の背景にある主要因の一つとして挙げられています。

 

まず、喫煙習慣が与える影響については複数の医療研究で明らかになっています。ニコチンや一酸化炭素などの有害物質は、精巣内の造精細胞を傷つけ、精子濃度や精子運動率、形態正常率のいずれも著しく低下させることが報告されています。さらに、タバコに含まれる有害化学物質は精子DNAの断片化(DFI)を進行させ、受精能や着床率の低下につながる可能性が指摘されています。

 

続いて、慢性的なストレスが引き起こす男性不妊のリスクにも着目しなければなりません。精神的ストレスは下垂体-性腺軸に影響を及ぼし、ゴナドトロピンの分泌を抑制することがあります。その結果、テストステロンの分泌が減少し、勃起障害や性欲減退、精子形成能力の著しい低下といった症状が現れる場合があります。特に仕事上のプレッシャーや家庭内ストレスなどが複雑に関係しているケースでは、医師とのカウンセリングやストレスマネジメントが不可欠です。

 

また、運動不足も見過ごせないリスクファクターです。適度な運動は血流を促進しホルモンバランスを整える一方で、座位中心の生活は陰嚢部の温度上昇を招き、精巣の造精機能に悪影響を与えます。陰嚢温度のわずかな上昇でも精子濃度の低下が見られることは、泌尿器科領域でも知られています。

 

以下の表は、生活習慣別における不妊リスクの主なメカニズムと対策をまとめたものです。

 

生活習慣精子への影響主な要因対策例
喫煙精子濃度・運動率・形態異常有害化学物質、酸化ストレス禁煙外来、代替療法の導入
ストレス性欲減退、ホルモン分泌低下下垂体機能抑制、交感神経優位心理療法、睡眠改善、運動習慣
運動不足陰嚢温度上昇による造精障害血流停滞、筋力低下有酸素運動、立ち仕事の導入

 

これらの生活要因に共通しているのは、酸化ストレスとホルモン異常を通じて、造精機能や精液所見に影響を与える点です。たとえば、酸化ストレスにより精子膜が損傷し、DNA断片化率が上昇することは、精液検査では把握しにくいながらも、体外受精や顕微授精の成功率に大きく影響します。妊活中の男性や不妊治療中のカップルにとっては、日常の生活習慣改善こそが第一歩になるのです。

 

不妊リスクが高い職業・勤務形態とは

男性不妊のリスクは、日々の生活習慣だけでなく、「どのような職業に就いているか」「どのような勤務環境にあるか」といった就労形態とも密接に関係しています。特に近年では、精巣の温度上昇、化学物質・放射線への曝露、慢性的な座位姿勢など、職場環境由来の精子形成異常やホルモン異常が医学的に報告されるケースが増加しています。こうした知見を知ることは、妊活・不妊治療を前向きに捉えるきっかけになるはずです。

 

どんな職業が不妊リスクと関連するのか

 

以下は、男性不妊と明確な相関が指摘されている代表的な職種や勤務環境の一部です。

 

職業・業種主なリスク要因影響する可能性のある生殖機能
長時間座位の事務職陰嚢温度の慢性的上昇精子濃度低下、運動率低下
高温環境での作業(製鉄所、調理師など)精巣の温度上昇精子形成障害
電気・通信系エンジニア電磁波・放射線精子DNA損傷、ホルモン異常
化学工場・塗装工有機溶剤・化学薬品への暴露精巣毒性、乏精子症
運転業(長距離トラックなど)座位+振動+ストレス精巣血流障害、ホルモンバランス低下

 

なぜ職場環境が男性不妊に直結するのか

 

精子の形成(造精機能)には、精巣内の温度環境や血流、酸化ストレスレベルが大きく関係しています。陰嚢(睾丸)が体外にあるのは、体温より低い温度(約34℃)で造精機能を維持するためであり、高温環境や密着度の高い衣類、長時間の座位などにより陰嚢温度が上昇すると、精子の形成に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

 

また、塗装・印刷・化学工場などでは、有害化学物質(有機溶剤や重金属など)により造精細胞や精管に障害が起こることもあります。これらはDNAの損傷やホルモンの分泌異常にもつながり、不妊治療を受けても精子回収が困難なケースもあるのです。

 

不妊と関係しやすい勤務形態の特徴

 

職業リスクに加えて、「勤務形態」も見逃せません。以下に該当するような環境では、日常的に生殖機能に負荷がかかっている可能性があります。

 

  • 夜勤・交代制勤務でホルモンバランスが乱れやすい
  • 休憩時間が不規則でストレスが蓄積しやすい
  • 高温の屋外・屋内作業が中心で発汗・脱水が慢性化
  • 高ストレス業務(営業職・IT業界・医療現場など)

 

特に夜勤や不規則勤務は、メラトニンやテストステロンの分泌周期を狂わせ、性腺機能低下症のリスクを高めることが明らかになっています。これは泌尿器科学会でも警告されており、仕事中心の生活による不妊は「現代病」とも言えるでしょう。

 

実際に取るべき対策は?

 

  1. 勤務環境を見直す
    可能な限り座位の合間に立ち上がる、通気性のよい下着を選ぶなど、陰嚢の温度管理を徹底する。
  2. 職業病のリスクを医師に伝える
    不妊治療や精液検査を受ける際、自身の職業・勤務形態を正直に申告することで、適切な診断が可能になる。
  3. 定期的に精液検査を受ける
    特に高リスク職種に該当する場合は、半年〜1年おきに精液所見を確認し、異常を早期発見することが重要です。
  4. 転職や部署移動も視野に入れる
    不妊治療が長期化している場合、医師と相談しつつ労働環境を変えることも現実的な解決策になり得ます。

 

男性不妊の検査内容と治療の流れ

泌尿器科・生殖医療科・性機能外来の違いと選び方

男性不妊の検査や治療を始める際、まず悩むのが「どの診療科を受診すべきか」という点です。多くの方が婦人科の付き添いで初めて「男性にも検査が必要」と気づくのが現実です。しかし、男性不妊は「泌尿器科」「生殖医療科」「性機能外来」など、いくつかの選択肢があり、それぞれで専門性や治療方針が異なります。以下の表を参考にしながら、自身の状態に合った診療科を選ぶことが、正確な検査と効果的な治療への第一歩です。

 

診療科別比較テーブル

 

診療科主な対象疾患・症状特徴・役割推奨される受診者
泌尿器科精液量の減少、精索静脈瘤、射精障害など男性生殖器全般を診察。精管の通過障害や陰嚢内の静脈異常も扱う排尿トラブルや精巣の違和感がある人
生殖医療科不妊全般(男女)高度生殖医療(人工授精・体外受精)に対応。夫婦で通う前提の施設も多い女性パートナーと並行して妊活中の夫婦
性機能外来ED(勃起障害)、性欲低下などホルモンバランスや精神的要因も重視。カウンセリングが中心になることも性交に支障を感じている、性欲減退などを自覚する人

 

診療科の選び方ポイント

 

  1. まずは泌尿器科での基礎検査から
     精液検査、超音波検査、精索静脈瘤のチェックなど、多くの男性不妊症の原因を網羅できるのが泌尿器科です。日本泌尿器科学会が定めるガイドラインに基づいた診療がなされるため、初診には特に適しています。
  2. 高度な治療が必要な場合は生殖医療科へ連携
     無精子症や精巣機能低下など、自然妊娠が困難な場合は、体外受精や顕微授精などを実施する医療機関が必要です。パートナーの女性側の状態も併せて考慮されるため、夫婦での通院が前提になることが多いです。
  3. 性機能の悩みが主な場合は性機能外来の併用も有効
     勃起不全(ED)や性欲低下など、ホルモンや精神的な要素が絡む場合は性機能外来でのカウンセリングや薬物療法も検討されます。最近では性腺機能低下症やテストステロン低値が精子の質にも影響を及ぼすとされ、泌尿器科との連携が増えています。

 

よくある誤解

 

  • 「婦人科で一緒に相談すればいい」は誤り
     多くの婦人科は女性の診療に特化しており、男性不妊に必要な精密検査(精液検査や精索静脈瘤の診断など)は行っていません。男性自身が専門外来を受診することが重要です。
  • 「性機能の問題がないから大丈夫」とは限らない
     精液の量や見た目に異常がなくても、DNA断片化や運動率低下など、顕微鏡レベルでの異常は自覚症状がありません。目に見える症状がなくても検査を受けることが推奨されます。

 

行動のきっかけ

 

自分は関係ないと思っていた方も、「検査だけ」でも問題ありません。最近では自宅で精液を採取して提出できるクリニックや、オンライン初診に対応した泌尿器科も増えており、心理的なハードルは年々下がっています。

 

検査のステップ 精液検査・ホルモン検査・超音波検査

男性不妊の診断には、段階的な検査が欠かせません。中でも「精液検査」は最も基本かつ重要な検査であり、これを中心に必要な補助検査(ホルモン・超音波など)を組み合わせて診断精度を高めます。本節では、それぞれの検査の具体的な流れや目的、検査結果の読み方、検査を受ける前の注意点などを詳しく解説します。

 

主な検査項目と目的

 

検査項目検査目的主に診断できる疾患
精液検査精子の数・運動率・奇形率・精液量などを測定無精子症・乏精子症・精子無力症・精子奇形症など
ホルモン検査テストステロン・FSH・LH・プロラクチンなどの値を測定性腺機能低下症・下垂体機能障害・高プロラクチン血症など
超音波検査精巣の大きさ・構造・精索静脈瘤の有無などを画像で確認精索静脈瘤・精巣腫瘍・閉塞など
血液・染色体検査染色体異常やホルモン異常の有無をチェッククラインフェルター症候群・Y染色体微小欠失など

 

ステップ① 精液検査の流れ

 

精液検査は、最低でも2回の実施が推奨されます(WHO基準)。これは、体調や禁欲期間などの影響で結果が変動するためです。検査はクリニックまたは自宅採取のいずれかを選べます。

 

検査手順

 

  1. 採精前に禁欲期間を設ける(2~7日)
  2. 清潔な状態で、専用容器に直接採精
  3. 採取後は1時間以内に提出
  4. 顕微鏡で濃度・運動率・形態などを分析
  5. 結果を受けて医師が精子機能を総合評価

 

よくある疑問

 

  • Q:精液の量が多ければ安心?
     →いいえ、量ではなく「精子の数・動き・形」が重要です。見た目で判断せず、必ず検査を受けましょう。
  • Q:自宅採取と院内採取、どちらが正確?
     →精度に大きな差はありません。ただし、提出までの時間や保温状態に注意が必要です。院内採取が望ましいとされるケースもあります。

 

ステップ② ホルモン検査

 

精子の産生には、視床下部・下垂体・精巣が連携してホルモンを分泌しています。これらのバランスが崩れると、精子が作られなくなったり、勃起障害を招いたりします。

 

主な検査ホルモンと異常の目安

 

ホルモン主な役割異常時に疑われる疾患
テストステロン男性ホルモン・性欲・筋肉量・精子形成男性更年期・性腺機能低下症
FSH(卵胞刺激)精子形成の指令を出す無精子症・乏精子症
LH(黄体形成)テストステロンの分泌促進精巣機能不全・下垂体機能低下症
プロラクチン性機能の調整・ストレスとの関連高プロラクチン血症・ED・性欲低下など

 

ステップ③ 超音波検査・触診・血液検査

 

精巣や精索の構造的異常は、触診や超音波で確認します。特に「精索静脈瘤」は若年~中年男性に多く、治療により妊娠率が向上するケースも報告されています。

 

また、染色体検査では遺伝的異常の有無を確認し、原因不明の無精子症などの診断に役立ちます。

 

検査の所要時間・費用の目安

 

検査名所要時間目安費用目安(保険適用時)備考
精液検査約30分約3,000〜5,000円2回以上の検査が望ましい
ホルモン検査約10分約2,000〜4,000円採血が必要
超音波検査約10分約2,000〜4,000円精巣の大きさ・腫瘍などを確認
染色体検査約1〜2週間約10,000〜20,000円保険適用外の施設も多いため確認が必要

 

まとめ

男性の不妊治療は、今や特別なものではなくなっています。不妊の原因のおよそ半分が男性側にあるという現実が、厚生労働省や日本生殖医学会からも報告されており、検査や治療の重要性が年々高まっています。精子の量や運動率の低下、射精障害、精索静脈瘤など、多くの要因が男性不妊症に関与していますが、専門の医療機関で検査を受けることで、その原因は明確になります。

 

不妊治療の第一歩として重要なのは、自分の状態を正しく知ることです。精液検査やホルモン検査、超音波検査など、現代の医療技術では非侵襲的に多くの情報が得られます。さらに、保険適用の範囲も広がっており、経済的なハードルも徐々に下がりつつあります。泌尿器科や性機能外来、生殖医療専門のクリニックなど、目的に応じた受診先を選ぶことも大切です。

 

「費用が高いのでは」「恥ずかしくて受診しにくい」「自分に異常があるか分からない」といった悩みは多くの男性が抱えています。しかし、放置してしまうことで治療開始が遅れ、パートナーへの心理的負担や妊娠のチャンスを逃してしまう可能性もあるのです。

 

本記事では、男性不妊の原因から検査・治療の流れまで、最新の医療情報と専門的見解をもとに詳しく解説しました。この記事を読んだあなたが、自身の健康と向き合い、一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。正しい情報と理解があれば、不安は軽減され、妊活への前向きな一歩に変わるはずです。

 

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森ノ宮アクア鍼灸治療院は、鍼灸を通じた不妊治療を提供し、妊娠を望む方々を支援しています。独自のアプローチで体質改善とホルモンバランスの調整を目指し、特に自然妊娠をサポートする施術を行っています。患者一人ひとりの体調に応じた丁寧なカウンセリングと施術計画を通じ、リラックスした環境で治療を受けられるのが特徴です。

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よくある質問

Q. 精子の質を改善するにはどれくらいの期間と取り組みが必要ですか?
A. 精子の生成には約74日かかるため、改善効果が現れるまでには最低でも2〜3か月の生活改善が必要とされています。禁煙やアルコール制限、ストレスの軽減、適度な運動、バランスの取れた食事が重要です。実際、精索静脈瘤の手術後に精液所見が改善したケースでは、平均して3か月〜6か月で運動率や精子濃度に明らかな改善が見られています。また、サプリメント療法やホルモン補充療法も一定の効果が期待できるため、医師との相談が推奨されます。

 

Q. 精液採取に抵抗があります。どんな方法があり、プライバシーは守られますか?
A. 精液採取は、一般的に医療機関内の専用採取室で行われますが、近年ではプライバシー保護の観点から自宅採取が可能なクリニックも増えています。ただし、自宅採取の場合は採取後1時間以内に提出する必要があり、精子の劣化を防ぐため温度管理も求められます。専用カップや保温袋が提供されるため安心です。どうしても抵抗がある場合は、パートナーとの協力や医師との相談により、ストレスの少ない方法を選択することが可能です。

 

Q. 男性不妊でも自然妊娠は可能ですか?人工授精や体外受精との違いは?
A. 男性不妊でも、精子の運動率や濃度が一定以上あれば自然妊娠の可能性はあります。たとえば、WHOの精液基準において精子濃度15ml以上・運動率40%以上が正常とされており、この基準を満たす場合は妊娠の確率も上がります。人工授精では排卵に合わせて精子を子宮に注入することで妊娠率を高め、体外受精や顕微授精ではより精密な操作で妊娠を目指します。自然妊娠が難しいと判断された場合でも、医療技術の選択肢が広がっているため、早期の検査と正確な診断が重要です。